OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本の労働生産性はずっと低迷しています。毎日真面目に長時間働いている自分を振り返り、「どうして?」と疑問に思う人も多いはずです。実は、仕事とは「適度に手を抜くほど生産性が高まる」という逆説的な側面があるのです。欧州の働き方に学ぶ、日本の課題とは何でしょうか。今回は、その核心に迫ります。
まずは欧州でよく聞かれる驚きのエピソードから。友人のラジオDJは、サッカー観戦を楽しみつつスペインからフランスへと旅をしていました。国境付近の渋滞でバスが進まず、運転手は突然高速を降りて一般道へ。しかしバスは途中で停車し、乗客は全員降ろされてしまいます。理由は「定時勤務が終わったので、ここから先は各自で移動してほしい」というもの。日本人なら激怒しそうですが、欧州の人々は文句も言わずに散っていったそうです。
この話に限らず、欧州では15時以降の予定は避けるのが普通です。銀行や役所も定時になれば客が並んでいても閉店し、残業はほぼありません。むしろ、木曜午後や金曜は仕事に身が入らないのが当たり前。こうした「ゆるさ」が、実は労働生産性の高さに繋がっています。OECD加盟国の中で、労働生産性が高いのは欧州諸国が多く、日本はむしろ例外的な存在と言えるでしょう。
日本では「静かな退職者」と呼ばれる、最低限の業務だけをこなす社員が批判されがちですが、欧州では彼らの働き方が標準的でむしろ優秀と見なされます。こうした差はどこから来るのでしょうか?
例えば、バス運転手のケースを考えてみましょう。日本なら乗客を最後まで目的地に届けるために時間外労働をしてしまいますが、欧州では定時に仕事を終わらせるのが普通です。結果、労働時間あたりの効率は欧州の方が高くなるのです。さらに、途中で乗客がタクシーなど別の交通手段を使えば新たな消費が生まれ、それも経済の活性化につながっています。
また、欧米の量販店では「いつでも返品OK」とし、不良品もある程度受け入れられています。一方、日本は「ジャパニーズ・クオリティ」と称されるほど不良品を極限まで減らすことに注力し、そのために検品や修理で労働時間が大幅に増えます。結果として、生産数量の増加はわずかですが、コストは増え、生産性は下がってしまいます。
さらに、配送業者の話では、欧米では外箱の傷や汚れは大きな問題にならず、細かいクレームは少ないのに対し、日本企業は些細な傷でも返品や交換を求めるため、過剰な品質管理が生産性を圧迫しています。
野菜の例でも同様です。欧州では形が曲がったり傷があったりしても商品として販売されるのに対し、日本では不良品扱いされ、農家の作業負担が増えています。結果、売上は減り、労働時間だけが増える悪循環に陥っています。
つまり、丁寧に完璧を求めるほど生産性は落ち、手を抜くほど効率が上がるのが現実です。こうした視点から見ると、欧州の働き方や日本の「静かな退職者」は合理的であり、日本社会の「働き方常識」こそ見直す必要があるのです。
これからは「がむしゃらに長時間働くこと」が評価される時代ではありません。効率的に働き、適度なゆるさを持つことこそが、真の生産性向上につながるのです。欧州の実態に学びながら、日本の働き方改革を進めていくことが求められています。
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